翻訳 ロシア語。 ロシア語辞書

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翻訳 ロシア語

ロシア語商業翻訳を巡る現代の諸問題 出羽(仲)弘 ここで「商業翻訳」というのは、顧客の事業のための職業的翻訳のすべて、すなわちインタープレスの藤岡啓介氏が「翻訳は文化である」(丸善ライブラリー326)の中で名づけた「(翻訳者の)署名の無い」翻訳のことを指しております。著作権法第15条に該当する文書の翻訳などが相当の部分を占めています。 戦後の日ソ経済関係の開始とともに始まったロシア語翻訳がもっとも盛んであったのは、日ソ間で「プロジェクト」貿易、プラント輸出などがもっとも活発にであった1960年代後半から1980年代末まででした。 この時期にはロシア語翻訳者の数は200人から250人に達していたと思われます。 ソ連の崩壊とともに、プラント輸出はゼロに近くなり、技術翻訳を中心として形成された日本のロシア語翻訳業界は「壊滅状態」になりました。 いわゆる「ソ連専業翻訳会社」の数は5社か6社程度となり、翻訳者の数は30人程度になったのではないかと思います。 その後、翻訳需要の発生は、要するに政府、政府系機関の資金による事業のための翻訳が中心となりました。 翻訳者の数は、減少を続けているようです。 地域的に見ると、ロシアへの「市場化支援」と中央アジア、カフカース諸国を中心とする「ODA関係」の翻訳。 内容から言えば、若干の「技術翻訳」のほかは、「市場化支援」講座のためのテキストの翻訳と、原子力問題などの協力などを含む科学技術協力実施に伴う翻訳、それに、極東・サハリンと北海道などの間に形成され始めた地域的な実務関係や調査関係文書などです。 昨年秋の「テロ報復」戦争とともに、ODA関係の発注が中断しましたが、現在少しずつ復活しています。 「鈴木宗男」事件以来政府機関の混迷がロシア語翻訳の発注状況に陰を落としています。 翻訳発注量の減少ばかりでなく、翻訳料が大幅に低下しております。 これは、一面では、日本国内の乱暴な「リストラ」旋風による一般的な賃金・労働報酬の低下と、他面では、モスクワ、極東などのロシア国内での安価な翻訳という「競争相手」がの出現が大きな要因となっています。 モスクワに英ロ・ロ英翻訳を発注すると、技術翻訳で1枚(1800文字)7ドルから15ドルという、私たちの最低価格の6分の1ないし4分の1の価格で翻訳発注ができます。 外国の低賃金と円高によって国内の産業(翻訳)が空洞化する、という意味で、私たちはこれを「翻訳におけるユニクロ現象」と名づけています。 大抵の企業は技術文書をすでに英語で作成して持っておりますから、多くのエージェントは、このような文書のロシア語訳をモスクワに発注してしまいます。 一部の日本語文書のロシア語訳は、ウラジオストクやその他の極東の都市にも同様の安値で発注することができます。 私自身は、現在のところ、このようなものと競争しなければならない技術翻訳は原則として断ることにしています。 しかし、現在、こうしてロシア、あるいは一部の東欧の国に発注して出来上がってきたロシア語翻訳の質には大きな問題が存在することが明らかになり、一部には日本で翻訳をやり直さなければならない、という事態が出てきました。 「結局高いものについた」という会社が現れています。 ところで、ソ連時代には見られなかった新しい現象ですが、日本国内には普通のロシア人の「居留者の集団」が形成されています。 このうちで、若干の人々(おそらく10人から15人)が通訳者、翻訳者として働いています。 彼らはすでに十分に経験をつんで立派な翻訳を行う能力を持っており、私たち日本人翻訳者との関係も良好です。 ロシア語通訳協会にも加入して、大きな貢献をなさっている人も多数おられます。 現代のロシア語翻訳における大きな課題は、日ロ両国の翻訳者の高度な共同作業を組織して、翻訳の質を飛躍的に向上する問題であります。 「ネイティブチェック」というレベルの協力では、良い翻訳が必ずしも期待できるわけではありません。 翻訳は、文書で示された物事の「因果関係」「話のスジ」を明らかにする、という論理的な側面と、同時に「人の気持ちを動かす」という「情緒、文化」の背景からくる要求に応えなければなりません。 人間は自分の母語を思考と理解の道具、物事を発想する基点としています。 これらは歴史的に形成されたものであり、この両面で、日本とロシアの現実の間には大きな距離があります。 翻訳はこの距離を克服しなければなりません。 日本語のとおり翻訳しても、習慣、伝統や社会的環境の相違から、内容が異なって伝えられる、すなわち、国情の違いからくる誤解や無理解が生じる可能性もあります。 こういう問題まで考えながら、ひとつの文書の内容を、日本語とロシア語の両面から攻めるのがプロの翻訳者(または翻訳者集団)の仕事です。 公式文書、半公式文書、儀礼上重要な文書などは形式・書式も、それぞれの国によって異なります。 公式的、あるいは儀礼的な翻訳の場合は、日本の慣例と書式、そして定式的表現に従ってそのまま翻訳するのが適当な場合もあれば、相手国の慣例、書式、定式的表現を重視しなければならない場合もあります。 その中間点を選択する場合もあります。 専業プロの行う翻訳は単純な「直訳」翻訳作業ではありません。 事実を正確に表現し、両国の人々にわかり易い、しかもそれそれぞれの国の慣習となっている定型書式の相違まで考慮しながら、心理的にも違和感なくうけいれてもらえる文書をつくり、事業の成功とリスクの減少に協力することが課題です。 この点でも、何よりも好ましいのは、日本人とロシア人の翻訳者が協力して翻訳を仕上げることです。 商業翻訳にあっては、たとえロシア人が翻訳したロシア語文であっても、有能な日本人翻訳者のチェック(または両者による共同の検討)を必要とします。 重要な文書になると、すでに翻訳作業の過程において、双方の共同作業が要求されます。 私も時にはロシア人と一緒に何日も共同作業をすることもあります。 ひとつの単語に1時間以上もかけて討論することがあります。 勿論、報酬は原則として日本人もロシア人も同額でなければなりません。 在日ロシア人翻訳者もまた、今では私たちと同じように、「ユニクロ現象」の被害者です。 また、問題によっては専門家の意見、援助も必要です。 これに対する支払いもしなければなりません。 すくなくとも、私などは、ひとつの翻訳をはじめるにあたり、数冊の相当高価な規格書や技術書を買い入れることも稀ではありません。 先に述べたように、現在の日本では、両国の翻訳者が協力できる可能性という点では、いまだかってなかったほど好条件が、客観的には存在します。 ロシア語通訳協会でも、ロシア人と日本人の通訳の間でかなり進んだ両者の接触と相互啓発の過程が始まっています。 大きな問題は、翻訳料金です。 上記のような、実務翻訳における要求と条件を満たすために、両国の翻訳者の協力による程度の高い文書作成は、当然のことながら、低いコストでは不可能です。 この時代の要求と真正面から衝突しているのが、なにがなんでも「安い翻訳料金」を求めるという一部の発注者の立場です。 これにより何よりも大きな被害を受けているのが、日本におけるロシア語翻訳そのものの将来です。 勿論、企業の翻訳料低減の必要性を私たちは無視するものではありません。 しかし、私たちが何よりも大切にしたいのは、専門的、プロフェッショナルな分野における、高水準・高品質のロシア語翻訳力の保存と発展です。 顧客である政府機関、各団体、企業自身の持つ語学能力を考慮して、最も適当な分業体制を築き上げて、ロシアとの事業、ロシアとの文書・言語による交流をさらに発展させることを私たちは目指しています。 私はロシア語の専門家ですが、企業内にロシア語のできる社員がすでに働いている場合は別として、日本の官庁、団体、企業は、ロシアとの日常の交流や取引において英語を大いに活用することが重要ではないかと考えます。 日本の企業や団体は、日常的な英文レター E-mailも含め の交換に関する業務は、ほとんど内部でこなすことができるはずであります。 これによりまず第一にロシアとのコミュニケーション業務のコストが下がるでしょう。 ロシア企業との契約書も、できれば英語で作成すべきです。 これによって企業内における契約遂行時の作業はすべて英語を基礎として行なわれることになり、日本側の活動の機動性が向上します。 ロシア語でもなく日本語でもない第三国語の使用により、言語に起因するリスクは日本側もロシア側も平等となり、一般貿易取引における紛争発生時における日本側の対応も、ロシア語による契約書使用の場合にくらべてより機動的になるでしょう。 総じて、英語によるロシアとの業務通信の拡大により、社内の業務能率の向上、貿易・金融手続きの簡便性の向上、それによるコストの低下は非常に大きなものであります。 いわば、英語は日本の貿易業務にとっては、十分な発達をとげた「言語的インフラストラクチャ」と考えていいでしょう。 英語に対しては、すでに長い伝統の中で、わが国ではこの言葉の使用のための国家的・社会的投資が大きな規模で行なわれています。 こういう背景を有しないロシア語の使用コストが当面高くつくのは当然です。 こうしてできるだけ英語を使用して、ロシアとの関係における一般的な語学上のコストを低減するなかで、ロシア語による翻訳・通訳業務の、やむをえないコストの高さを吸収していただくようにしたいと思います。 我々ロシア語翻訳の専門家は、語学専門家でなければできない高度な文書処理作業を主体として、社会で独特の役割を話さねばならないと考えます。 たとえば、先方からロシア語で送られてくる大きな文書、あるいはロシアと日本両国の文化的、社会的、言語的環境、技術的伝統の共通点と相違点を十分に考慮した、質の高い内容の文書、現地事情に関する調査文献、ロシアの法令書類、ロシアの公衆むけの文書の翻訳などが、当面、私たちの翻訳対象となる文書の例です。 但し、現在日常的な関係が著しく発展している北海道地域とロシアとの間の交流言語、とりわけ漁業関係、一部木材取引関係の文書は、いろんな事情で、今後も、ロシア語文書やロシア語通訳による比率が大きいまま続けられることになるでしょう。 北洋における漁業は、日本が開発・発展させ、その技術のノウハウは日本からロシアに伝授したものであるという歴史があります。 サカナの名前から漁具・漁法にまで、日ロ間のロシア語の伝統は特別なものです。 また我々の側にも、日ロ間の漁業の特殊性を十分に考慮した翻訳をできる経験の深い通訳・翻訳者陣があり、またさまざまなレベルのロシア語の普及が北海道では行なわれています。 木材についても、似たような歴史的事情がある程度存在しています。 日本からロシアへの投資活動は、現在は非常に低迷しておりますが、将来これが復活し、大規模な業務の「現地化」が始まれば、日本におけるロシア語専門家の参加によるさまざまな文書の翻訳、人的接触における通訳者の必要性も高まることは必至です。 一部の企業は、ロシア人を雇用することによりこのような仕事にたいする対処能力を有するようになっておりますが、それでも、多くの文書の翻訳は、日本人のロシア語専門家とロシア人の共同作業が必要となるであろうことは、最近の私たち自身の活動経験からも明らかです。 サハリン石油ガスプロジェクトの経験は、我々ロシア語専門家の立場から見て、検討すべき問題を提起しています。 この事業の場合、現地業務そのものは、米国の資本と技術、米国の専門家の参加により行なわれたので、実行時期に入ってからのロシア語通訳や翻訳専門家の参加はほとんど「不要」でしたが、その実現までの背景作り、双方の経済界の接触、日ソ・日ロ経済委員会その他の長い期間にわたる活動は、日本人の通訳や翻訳者の相当の規模の参加なくしては不可能でした。 サハリン石油ガスプロジェクトは、このような大規模な、かつ多国間にわたるプロジェクトにおける、英語の果たす役割と日本人のロシア語専門家の役割の分担とその規模についての、一般的な、また或る意味では特殊な例としての教訓を残しております。 しかし、物事の本質にさかのぼって考えると、私たちロシア語専門家にとっての、現在の最大の問題点は、日ロ関係の低迷そのものにあります。 おそらく、今の状況では、有能なロシア語翻訳者の数はさらに減少するでしょう。 全体としてみると、日本国民、日本の企業がロシアとの関係の発展に興味を失っています。 外務省の失態や日本経済の状況、銀行の能力が問題になっています。 これも勿論重要な要素です。 しかし、最も重要な問題は、日本側も、ロシア側も、何よりも基本的な点、すなわち両国間の関係における国家戦略と国民感情の点で大きな問題を有していることであります。 領土問題ひとつをとっても、日ロの双方の側が、20世紀に犯された大きな誤りを十分に認識する必要があります。 そして21世紀における世界の重要問題解決のために協力する必要性を考え、積年の問題を根本的に検討し、今後の協力の基礎とするという状況が作り出されなくては、これらの問題の根本的な解決は不可能でしょう。 追記 サハリン石油・ガスプロジェクトの交渉史をたどると、日本が或る重要な時期に欧米のメジャーに先を越されたことが大きな意味を持っているように思われます。 結局、新しいエネルギー資源の開発と西側との協力の問題において実力を有していたのはソ連ガス工業省でした。 しかし、日本はそれまでのいきさつからして、主としてソ連石油工業省との交渉に重点をおいていたことが、この立ち遅れの一つの(しかし大きな)原因のように思われます。 サハリンプロジェクトで、実現段階の直前において、日本の役割が欧米勢力に先を越されたことが、「現地化」の時期以降の日本のロシア語専門家の「不要度」を高めたかどうかは、なお検討の余地があるでしょう。 大きく見れば技術的にも、またソ連との交渉戦略においても、欧米メジャーが巨大な力を発揮したのは、「当然の結果」かも知れませんが、このあたりの事情は、さらに解明の余地がありそうに思われます。 当時の日本側とソ連石油工業省との交渉の問題点は、鈴木啓介氏著「財界対ソ攻防史」(1998年、日本経済評論社)において、「幻のチュメニ交渉」の部分で詳しく述べられています。 ここで鈴木氏は詳しい分析を行なってはいるものの、サハリン問題には触れておりません。 しかし、同氏は、この著書のあとがきの最後に「半世紀に及びわが国の対ソ経済関係を縛っていた制約はひとまず消滅している。 そして、もはや過去の主役たちから、何かを得ようとする姿勢までをも放棄したかに見える」と書いています。 経団連において、当時の日ソ間のプロジェクト交渉に最大の役割を果たした「ロシア語専門家」とも言える鈴木氏の書かれた、この一行の本当の意味は、まだ解明されていないように思われます。 (これは、2002年5月18日、上智大学で行われたロシア語通訳協会のシンポジウム「CIS結成から10年、ロシア語通訳・翻訳者を取り巻く現状」で「翻訳部門」の状況について行なわれた出羽弘の発言のためのトーキングペーパーに、あらためて加筆したものです。 ) 2002.

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ロシア語商業翻訳を巡る現代の諸問題 出羽(仲)弘 ここで「商業翻訳」というのは、顧客の事業のための職業的翻訳のすべて、すなわちインタープレスの藤岡啓介氏が「翻訳は文化である」(丸善ライブラリー326)の中で名づけた「(翻訳者の)署名の無い」翻訳のことを指しております。著作権法第15条に該当する文書の翻訳などが相当の部分を占めています。 戦後の日ソ経済関係の開始とともに始まったロシア語翻訳がもっとも盛んであったのは、日ソ間で「プロジェクト」貿易、プラント輸出などがもっとも活発にであった1960年代後半から1980年代末まででした。 この時期にはロシア語翻訳者の数は200人から250人に達していたと思われます。 ソ連の崩壊とともに、プラント輸出はゼロに近くなり、技術翻訳を中心として形成された日本のロシア語翻訳業界は「壊滅状態」になりました。 いわゆる「ソ連専業翻訳会社」の数は5社か6社程度となり、翻訳者の数は30人程度になったのではないかと思います。 その後、翻訳需要の発生は、要するに政府、政府系機関の資金による事業のための翻訳が中心となりました。 翻訳者の数は、減少を続けているようです。 地域的に見ると、ロシアへの「市場化支援」と中央アジア、カフカース諸国を中心とする「ODA関係」の翻訳。 内容から言えば、若干の「技術翻訳」のほかは、「市場化支援」講座のためのテキストの翻訳と、原子力問題などの協力などを含む科学技術協力実施に伴う翻訳、それに、極東・サハリンと北海道などの間に形成され始めた地域的な実務関係や調査関係文書などです。 昨年秋の「テロ報復」戦争とともに、ODA関係の発注が中断しましたが、現在少しずつ復活しています。 「鈴木宗男」事件以来政府機関の混迷がロシア語翻訳の発注状況に陰を落としています。 翻訳発注量の減少ばかりでなく、翻訳料が大幅に低下しております。 これは、一面では、日本国内の乱暴な「リストラ」旋風による一般的な賃金・労働報酬の低下と、他面では、モスクワ、極東などのロシア国内での安価な翻訳という「競争相手」がの出現が大きな要因となっています。 モスクワに英ロ・ロ英翻訳を発注すると、技術翻訳で1枚(1800文字)7ドルから15ドルという、私たちの最低価格の6分の1ないし4分の1の価格で翻訳発注ができます。 外国の低賃金と円高によって国内の産業(翻訳)が空洞化する、という意味で、私たちはこれを「翻訳におけるユニクロ現象」と名づけています。 大抵の企業は技術文書をすでに英語で作成して持っておりますから、多くのエージェントは、このような文書のロシア語訳をモスクワに発注してしまいます。 一部の日本語文書のロシア語訳は、ウラジオストクやその他の極東の都市にも同様の安値で発注することができます。 私自身は、現在のところ、このようなものと競争しなければならない技術翻訳は原則として断ることにしています。 しかし、現在、こうしてロシア、あるいは一部の東欧の国に発注して出来上がってきたロシア語翻訳の質には大きな問題が存在することが明らかになり、一部には日本で翻訳をやり直さなければならない、という事態が出てきました。 「結局高いものについた」という会社が現れています。 ところで、ソ連時代には見られなかった新しい現象ですが、日本国内には普通のロシア人の「居留者の集団」が形成されています。 このうちで、若干の人々(おそらく10人から15人)が通訳者、翻訳者として働いています。 彼らはすでに十分に経験をつんで立派な翻訳を行う能力を持っており、私たち日本人翻訳者との関係も良好です。 ロシア語通訳協会にも加入して、大きな貢献をなさっている人も多数おられます。 現代のロシア語翻訳における大きな課題は、日ロ両国の翻訳者の高度な共同作業を組織して、翻訳の質を飛躍的に向上する問題であります。 「ネイティブチェック」というレベルの協力では、良い翻訳が必ずしも期待できるわけではありません。 翻訳は、文書で示された物事の「因果関係」「話のスジ」を明らかにする、という論理的な側面と、同時に「人の気持ちを動かす」という「情緒、文化」の背景からくる要求に応えなければなりません。 人間は自分の母語を思考と理解の道具、物事を発想する基点としています。 これらは歴史的に形成されたものであり、この両面で、日本とロシアの現実の間には大きな距離があります。 翻訳はこの距離を克服しなければなりません。 日本語のとおり翻訳しても、習慣、伝統や社会的環境の相違から、内容が異なって伝えられる、すなわち、国情の違いからくる誤解や無理解が生じる可能性もあります。 こういう問題まで考えながら、ひとつの文書の内容を、日本語とロシア語の両面から攻めるのがプロの翻訳者(または翻訳者集団)の仕事です。 公式文書、半公式文書、儀礼上重要な文書などは形式・書式も、それぞれの国によって異なります。 公式的、あるいは儀礼的な翻訳の場合は、日本の慣例と書式、そして定式的表現に従ってそのまま翻訳するのが適当な場合もあれば、相手国の慣例、書式、定式的表現を重視しなければならない場合もあります。 その中間点を選択する場合もあります。 専業プロの行う翻訳は単純な「直訳」翻訳作業ではありません。 事実を正確に表現し、両国の人々にわかり易い、しかもそれそれぞれの国の慣習となっている定型書式の相違まで考慮しながら、心理的にも違和感なくうけいれてもらえる文書をつくり、事業の成功とリスクの減少に協力することが課題です。 この点でも、何よりも好ましいのは、日本人とロシア人の翻訳者が協力して翻訳を仕上げることです。 商業翻訳にあっては、たとえロシア人が翻訳したロシア語文であっても、有能な日本人翻訳者のチェック(または両者による共同の検討)を必要とします。 重要な文書になると、すでに翻訳作業の過程において、双方の共同作業が要求されます。 私も時にはロシア人と一緒に何日も共同作業をすることもあります。 ひとつの単語に1時間以上もかけて討論することがあります。 勿論、報酬は原則として日本人もロシア人も同額でなければなりません。 在日ロシア人翻訳者もまた、今では私たちと同じように、「ユニクロ現象」の被害者です。 また、問題によっては専門家の意見、援助も必要です。 これに対する支払いもしなければなりません。 すくなくとも、私などは、ひとつの翻訳をはじめるにあたり、数冊の相当高価な規格書や技術書を買い入れることも稀ではありません。 先に述べたように、現在の日本では、両国の翻訳者が協力できる可能性という点では、いまだかってなかったほど好条件が、客観的には存在します。 ロシア語通訳協会でも、ロシア人と日本人の通訳の間でかなり進んだ両者の接触と相互啓発の過程が始まっています。 大きな問題は、翻訳料金です。 上記のような、実務翻訳における要求と条件を満たすために、両国の翻訳者の協力による程度の高い文書作成は、当然のことながら、低いコストでは不可能です。 この時代の要求と真正面から衝突しているのが、なにがなんでも「安い翻訳料金」を求めるという一部の発注者の立場です。 これにより何よりも大きな被害を受けているのが、日本におけるロシア語翻訳そのものの将来です。 勿論、企業の翻訳料低減の必要性を私たちは無視するものではありません。 しかし、私たちが何よりも大切にしたいのは、専門的、プロフェッショナルな分野における、高水準・高品質のロシア語翻訳力の保存と発展です。 顧客である政府機関、各団体、企業自身の持つ語学能力を考慮して、最も適当な分業体制を築き上げて、ロシアとの事業、ロシアとの文書・言語による交流をさらに発展させることを私たちは目指しています。 私はロシア語の専門家ですが、企業内にロシア語のできる社員がすでに働いている場合は別として、日本の官庁、団体、企業は、ロシアとの日常の交流や取引において英語を大いに活用することが重要ではないかと考えます。 日本の企業や団体は、日常的な英文レター E-mailも含め の交換に関する業務は、ほとんど内部でこなすことができるはずであります。 これによりまず第一にロシアとのコミュニケーション業務のコストが下がるでしょう。 ロシア企業との契約書も、できれば英語で作成すべきです。 これによって企業内における契約遂行時の作業はすべて英語を基礎として行なわれることになり、日本側の活動の機動性が向上します。 ロシア語でもなく日本語でもない第三国語の使用により、言語に起因するリスクは日本側もロシア側も平等となり、一般貿易取引における紛争発生時における日本側の対応も、ロシア語による契約書使用の場合にくらべてより機動的になるでしょう。 総じて、英語によるロシアとの業務通信の拡大により、社内の業務能率の向上、貿易・金融手続きの簡便性の向上、それによるコストの低下は非常に大きなものであります。 いわば、英語は日本の貿易業務にとっては、十分な発達をとげた「言語的インフラストラクチャ」と考えていいでしょう。 英語に対しては、すでに長い伝統の中で、わが国ではこの言葉の使用のための国家的・社会的投資が大きな規模で行なわれています。 こういう背景を有しないロシア語の使用コストが当面高くつくのは当然です。 こうしてできるだけ英語を使用して、ロシアとの関係における一般的な語学上のコストを低減するなかで、ロシア語による翻訳・通訳業務の、やむをえないコストの高さを吸収していただくようにしたいと思います。 我々ロシア語翻訳の専門家は、語学専門家でなければできない高度な文書処理作業を主体として、社会で独特の役割を話さねばならないと考えます。 たとえば、先方からロシア語で送られてくる大きな文書、あるいはロシアと日本両国の文化的、社会的、言語的環境、技術的伝統の共通点と相違点を十分に考慮した、質の高い内容の文書、現地事情に関する調査文献、ロシアの法令書類、ロシアの公衆むけの文書の翻訳などが、当面、私たちの翻訳対象となる文書の例です。 但し、現在日常的な関係が著しく発展している北海道地域とロシアとの間の交流言語、とりわけ漁業関係、一部木材取引関係の文書は、いろんな事情で、今後も、ロシア語文書やロシア語通訳による比率が大きいまま続けられることになるでしょう。 北洋における漁業は、日本が開発・発展させ、その技術のノウハウは日本からロシアに伝授したものであるという歴史があります。 サカナの名前から漁具・漁法にまで、日ロ間のロシア語の伝統は特別なものです。 また我々の側にも、日ロ間の漁業の特殊性を十分に考慮した翻訳をできる経験の深い通訳・翻訳者陣があり、またさまざまなレベルのロシア語の普及が北海道では行なわれています。 木材についても、似たような歴史的事情がある程度存在しています。 日本からロシアへの投資活動は、現在は非常に低迷しておりますが、将来これが復活し、大規模な業務の「現地化」が始まれば、日本におけるロシア語専門家の参加によるさまざまな文書の翻訳、人的接触における通訳者の必要性も高まることは必至です。 一部の企業は、ロシア人を雇用することによりこのような仕事にたいする対処能力を有するようになっておりますが、それでも、多くの文書の翻訳は、日本人のロシア語専門家とロシア人の共同作業が必要となるであろうことは、最近の私たち自身の活動経験からも明らかです。 サハリン石油ガスプロジェクトの経験は、我々ロシア語専門家の立場から見て、検討すべき問題を提起しています。 この事業の場合、現地業務そのものは、米国の資本と技術、米国の専門家の参加により行なわれたので、実行時期に入ってからのロシア語通訳や翻訳専門家の参加はほとんど「不要」でしたが、その実現までの背景作り、双方の経済界の接触、日ソ・日ロ経済委員会その他の長い期間にわたる活動は、日本人の通訳や翻訳者の相当の規模の参加なくしては不可能でした。 サハリン石油ガスプロジェクトは、このような大規模な、かつ多国間にわたるプロジェクトにおける、英語の果たす役割と日本人のロシア語専門家の役割の分担とその規模についての、一般的な、また或る意味では特殊な例としての教訓を残しております。 しかし、物事の本質にさかのぼって考えると、私たちロシア語専門家にとっての、現在の最大の問題点は、日ロ関係の低迷そのものにあります。 おそらく、今の状況では、有能なロシア語翻訳者の数はさらに減少するでしょう。 全体としてみると、日本国民、日本の企業がロシアとの関係の発展に興味を失っています。 外務省の失態や日本経済の状況、銀行の能力が問題になっています。 これも勿論重要な要素です。 しかし、最も重要な問題は、日本側も、ロシア側も、何よりも基本的な点、すなわち両国間の関係における国家戦略と国民感情の点で大きな問題を有していることであります。 領土問題ひとつをとっても、日ロの双方の側が、20世紀に犯された大きな誤りを十分に認識する必要があります。 そして21世紀における世界の重要問題解決のために協力する必要性を考え、積年の問題を根本的に検討し、今後の協力の基礎とするという状況が作り出されなくては、これらの問題の根本的な解決は不可能でしょう。 追記 サハリン石油・ガスプロジェクトの交渉史をたどると、日本が或る重要な時期に欧米のメジャーに先を越されたことが大きな意味を持っているように思われます。 結局、新しいエネルギー資源の開発と西側との協力の問題において実力を有していたのはソ連ガス工業省でした。 しかし、日本はそれまでのいきさつからして、主としてソ連石油工業省との交渉に重点をおいていたことが、この立ち遅れの一つの(しかし大きな)原因のように思われます。 サハリンプロジェクトで、実現段階の直前において、日本の役割が欧米勢力に先を越されたことが、「現地化」の時期以降の日本のロシア語専門家の「不要度」を高めたかどうかは、なお検討の余地があるでしょう。 大きく見れば技術的にも、またソ連との交渉戦略においても、欧米メジャーが巨大な力を発揮したのは、「当然の結果」かも知れませんが、このあたりの事情は、さらに解明の余地がありそうに思われます。 当時の日本側とソ連石油工業省との交渉の問題点は、鈴木啓介氏著「財界対ソ攻防史」(1998年、日本経済評論社)において、「幻のチュメニ交渉」の部分で詳しく述べられています。 ここで鈴木氏は詳しい分析を行なってはいるものの、サハリン問題には触れておりません。 しかし、同氏は、この著書のあとがきの最後に「半世紀に及びわが国の対ソ経済関係を縛っていた制約はひとまず消滅している。 そして、もはや過去の主役たちから、何かを得ようとする姿勢までをも放棄したかに見える」と書いています。 経団連において、当時の日ソ間のプロジェクト交渉に最大の役割を果たした「ロシア語専門家」とも言える鈴木氏の書かれた、この一行の本当の意味は、まだ解明されていないように思われます。 (これは、2002年5月18日、上智大学で行われたロシア語通訳協会のシンポジウム「CIS結成から10年、ロシア語通訳・翻訳者を取り巻く現状」で「翻訳部門」の状況について行なわれた出羽弘の発言のためのトーキングペーパーに、あらためて加筆したものです。 ) 2002.

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【ロシア語翻訳の落とし穴】翻訳者が語る!ロシア語翻訳で注意するべき7つのこと

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